【6/7 開催レポート】未来クライム特別企画セミナー「多様な働き方を実現するデジタルワークとは?」

令和8年(2026年)6月7日、美唄市役所の大会議室にて、未来クライム特別企画セミナー「多様な働き方を実現するデジタルワークとは?」が開催されました。

本セミナーは、美唄市が推進する人材育成プロジェクト「未来クライム」の一環であり、来年度からの「Webディレクター養成コース」の本格スタートを目指したトライアル事業として実施しています。「子育てと仕事を無理なく両立したい」「将来のために副業を始めてみたい」「場所にとらわれない働き方に憧れる」といった想いを抱える若者や子育て中の女性などに向け、デジタルワークを通じたフリーランスという働き方の可能性や、地方創生におけるIT人材の重要性について、具体的なデータや実例を交えた解説が行われました。

■ 未来クライムが目指す「自走化」と本セミナーの目的

セミナーの冒頭、開会の挨拶とプロジェクトの背景が説明されました。美唄市の人材育成プロジェクトである「未来クライム」は、2023年に第1期のトライアルとしてスタートし、これまでに延べ50名程度の受講生に対して、プログラミングスキルを学ぶ場を提供してきました。

しかし、一定のスキルを身につけたものの、それを「いかに実際の仕事(稼ぎ)につなげていくか」というところには、プロジェクトとして改善の余地がある状況です。そこで、今年度の第4期からは、単なる制作スキルだけでなく、デジタル全般の仕事を作って回し、美唄の地域内で自走していくことを目的とした「ディレクターコース」をトライアルとして開設する運びとなりました。

本セミナーは、そのディレクターコースの本格始動を目指した第一歩となる入門編のセミナーです。

■ 地方創生とデジタルワークファクトリー

続いて、メイン講師であるスマートワーク株式会社の代表取締役社長、吉田徹氏が登壇しました。吉田氏は、厚生労働省の「ひとり親家庭在宅就業支援事業」や、内閣府の「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」での分科会設立・運営など、長年にわたり多様な働き方の支援に尽力されてきた専門家です。吉田氏はまず、日本全国の地方自治体が直面している人口減少と、若者の都市部への流出という深刻な課題に触れました。若者が地域を出てしまう最大の原因は「地域の中に希望を持てる、やりたい仕事が少ないこと」にあります。

しかし、時間や場所に縛られないデジタルワークを活用すれば、美唄市にいながら東京の大企業や、さらには海外の仕事を受注することが可能です。 吉田氏が全国の自治体(北海道安平町や栃木県日光市、鳥取県など)で推進している「デジタルワークファクトリー」は、まさにこの課題を解決するための仕組みです。地方でデジタル人材を育成し、大都市圏で発生するWeb制作や動画編集、SNS運用などの仕事を地方に分散して供給することで、地域に新しい仕事と収入のサイクルを創出しています。

■ 地方の中小企業に眠る「仕事のチャンス」

デジタルワークのニーズは、決して大都市圏だけにあるわけではありません。吉田氏は、地方の中小企業が抱えるデジタル化の遅れが、受講者にとっての大きな「仕事のチャンス」になると語りました。

現在、多くの企業がホームページを持っていますが、一度作って作りっぱなしになっており、更新作業ができていないケースが多々見受けられます。また、マーケティングの観点でも、若い世代がお店を探す際にGoogle検索からInstagramなどのSNS検索へと移行している中で、適切なSNS運用やSEO対策を打てていない企業も少なくありません。さらには、税務の相談相手として税理士がいるように、デジタルやWebの相談に乗ってくれる身近な専門家がいないという中小企業がほとんどであるという実態があります。

地域でデジタルスキルを身につけた人材は、こうした地元企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する身近な相談相手となり、ホームページの更新やSNSの運用代行など、地域内での仕事(デジタル地産地消)を自ら生み出すことができると解説されました。

■ フリーランスの実態と「成功の最大の秘訣」

セミナーの後半では、「フリーランス白書」のデータに基づき、フリーランスという働き方のリアルな実態が紹介されました。 フリーランスは、働く時間や場所を自由に選べる点などから働き方の満足度は非常に高い傾向にあります。一方で、収入面を見ると年間200万~400万円の層が多く、決して甘い世界ではないという厳しい現実も示されました。

単発の仕事を請け負うだけでは、仕事が終わるたびに次への営業をしなければならず、収入を安定させるのは困難です。そのため、継続的な仕事をもらえる関係性を築くことや、自分の時間単価(時給価値)を意識して単価を上げていく目標を立てることが求められます。

そして、吉田氏が「成功しているフリーランスとそうでないフリーランスの最大の違い」として最も強く強調したのが、「仲間を持っているかどうか」です。例えば、「Webデザインはできるが写真撮影は苦手」「文章を書くライティングが不得意」といった場合でも、それぞれの得意分野を持つ仲間とネットワーク(チーム)を組むことで、弱点を補完し合い、高品質な成果物をクライアントに提供できるようになります。

未来クライムのプロジェクトも、単なる個人のスキルアップではなく、地域で協力し合える「仲間づくり」の場を提供することを大きな目的の一つとしています。

■ 実践に向けた第一歩:Wix 体験講座と講師の紹介

フリーランスとしての心構えとして、ビジネスマナーやNDA(秘密保持契約)の重要性、メールだけでなくSlackやChatworkなどのコミュニケーションツールを使いこなす必要性などのビジネススキルについても言及されました。

また、「東京の家賃や物価の高さを考えれば、生活コストの低い地方に住みながら同じ収入を得る方が、結果として豊かな生活が送れる」という吉田氏の言葉は、参加者に大きな希望を与えました。 セミナーの最後には、具体的な実践への第一歩として、来月7月5日より全5回(計20時間)で開催される「Webディレクター体験講座(Wix体験会)」の案内が行われました。

この体験講座は、プログラミングの知識がなくてもWebサイトを制作できるノーコードツール「Wix」を用い、Webサイト制作やデザインの基礎、ECサイト構築などを実際に体験する実践的な内容です。 ここで、この体験講座のメイン講師を務める岩下寛樹氏が登壇し、自己紹介を行いました。

岩下氏は長年飲食業などに従事し、IT業界は全くの未経験でしたが、Wixというツールに出会ったことで、学習開始からわずか1ヶ月でWebデザインの講師を務めるまでに至ったという驚きのエピソードを披露しました。「未経験からでも十分に活躍できる」という岩下氏の実体験は、これから新しい働き方に挑戦しようとする参加者の背中を優しく、そして力強く押すものでした。

■ 質疑応答と今後の展望

質疑応答の時間では、参加者から「手持ちのパソコンのスペックでも大丈夫だろうか」「全5回の日程の中で、どうしても参加できない日があるかもしれない」といった具体的な不安や質問が寄せられました。運営側からは、中古のパソコンでも推奨メモリを満たしていれば問題なく作業できることや、欠席時には講義のアーカイブ動画やスライド資料を共有し、ご自身のペースでキャッチアップできる万全のサポート体制が整っていることが丁寧に説明されました。

また、今回の体験講座は、参加者1人1人をしっかりとサポートするために「定員 5名」という少人数制で実施されることも発表され、参加者の不安解消に努めていました。

まとめ

今回の「多様な働き方を実現するデジタルワークとは?」セミナーは、単にITツールやスキルを学ぶことの重要性を説くだけにとどまらず、そのスキルをどうやって実際の仕事(収入)にし、地域の中で仲間と共に自走していくかという「未来の青写真」を参加者に明示する素晴らしい機会となりました。

美唄市の人材育成プロジェクト「未来クライム」は、これまでのプログラミング学習というステップからさらに一歩踏み出し、地域の若者や子育て中の女性が「フリーランス」や「パラレルワーク」といった多様な働き方を実現するための本格的な伴走支援へと進化しています。今夏開催される体験講座を通じて、ここ美唄の地から、新しい働き方を体現し地域企業を力強く支えるデジタル人材(仲間)が次々と誕生していくことが、大いに期待されます。